Z1000R1 K.A様 エンジン不調点検

  

エンジン不調のため、点検修理のご依頼です。現状は1~2気筒失火している状態です。走行不能なので引上げに行ってきました。

 

現在のガソリンはレギュラーとのこと。この手の大型輸出車は必ずハイオクを使用してください。レギュラーだと高負荷時にノッキングが発生してエンジン破損の可能性があります。よって全部抜いてハイオクにします。

 

点火系は古いままなので、この機会にリフレッシュします。

 

エアクリBOXが無いのでバッテリー前に配線類が乱雑に有ります。SP2ユニットのマウントも兼ねるので、キャブ後方隔壁を装着します。

 

外したプラグはこちら。4気筒ともくすぶっています。

 

イグニッションコイルを外します。コードとキャップはテイラーに交換されています。

 

純正コイルは大きなクラックがあり、交換時期でした。

 

コードは抵抗も無く簡単に抜けてしまいます。

 

コネクタのネジを外すと、内部にあるはずのゴム製そろばん玉と樹脂のテーパーワッシャーがありません。ゴムのそろばん玉でコードを締め付けて固定する構造なので、これではただ差し込んでいるだけなので走行中の振動などで容易に外れるでしょう。

 

キャブも低速がバラツクそうなのでリセッティングします。

 

キャブホルダーは弾力があり、クラックも無いのでこのまま使えます。

 

予め用意した点火系の部品はこちら。ウオタニSP2 Ver.PAMSとSP2コイル用ブラケット、オレンジプラグキャップ、ブラックシリコンコードなどです。

 

オレンジプラグキャップはもともとイエローコードにセットされているので、ターミナルとコードを交換して改造します。

 

コイルブラケットはJ系用にシンプルな1枚物を3ミリのジュラルミン板で製作。

  

コイルにブラケットを取り付けます。

 

SP2ユニットは、住友3Mのデュアルロックファスナーでキャブ後方隔壁にマウントします。脱着式にして整備性を良くします。

 

隔壁も新規に製作。ブローバイホースは迂回していたので、ホースの穴は無しです。

 

既存のイグナイターとレギュレーターはバッテリーケースの前にあります。ここだと整備性が悪いので、変更後は別の場所にします。

 

純正イグナイターを外します。

 

レギュレーターを外します。こちらは既に変更歴有りです。

 

レギュレーターに繋がる社外メインハーネス側のカプラーです。黄色い3本の線がジェネレーターからの3相交流が流れる線です。発電中は50V程度の電圧とかなりの高電流が流れるので、端子が腐食してくると抵抗熱でこのように端子周辺が溶けてきます。これはカプラーと端子を新品交換します。

 

ステーターコイル側の接続も点検するので、スプロケカバーを外します。

 

クラッチケーブルはここを通してはいけません。ハンドルを切るとケーブルは結構上下するので、突っ張らないように、且つ、タイラップなどでの硬い固定もNGです。

 

正しいルートはフレームの外側です。マフラーとの接触回避は純正クランプだけで対処できます。

 

リヤスプロケットはあまり摩耗していませんが、フロントスプロケの摩耗は進行しています。

 

駆動側の摩耗が進み、少しくびれた形状に。スプロケは交換することになりました。

 

スプロケボルトを外します。大きな平ワッシャーの順番が間違っています。

 

正しくはこちら。

 

保管場所の床にオイルが少し垂れるそうで、スプラインのところに若干オイルが付いています。

 

アウトプットシャフトのオイルシールは挿入が浅いので、リップがスプロケ裏側と接触していたようです。オイルシールは交換します。

 

オイルシールプーラーでシールを抜き取ります。

 

周辺を洗浄します。

 

新しいオイルシールを挿入します。オイルシールはこのぐらい深いのが正しい状態です。カバーの内側と面一にするとこの位になります。

 

スプロケは急遽手配。純正互換の530コンバート仕様、サンスターのこれと同じものが付きます。

 

純正と同じ出っ張りはエンジン側にして取り付けます。J系は初めから取付面より4.6ミリオフセットしているスプロケというわけです。

 

ステーターコイルからの配線です。ギボシは腐食し熱で溶けて端子が一部露出しています。

 

こちらも切断して新品交換します。この作業は数年ごとにやる必要があるでしょう。

 

新品交換後はこちら。端子交換の度に線が短くなるりますが、2~3回は交換可能です。

 

リヤのエンジンマウントボルトの曲がりも気になりました。フロントのエンジンマウントインシュレーターがヘタると、エンジンが後ろに引っ張られてボルトが大きく曲がります。このまま放置するとクランクケースへのダメージも多くなるので、約10年くらいで定期交換した方がいいです。

 

フロントのエンジンマウント部です。アルミのエンジンマウントブラケットに交換されているので脱着歴はあるようです。U字のスペーサーが奥まで入っていないのも気になります。

 

U字のスペーサーはこちら。これが入っていない車両もよくあるのでご注意を。

 

ピックアップコイルを交換します。

 

SP2のタイミングローターを取り付けます。締め付け後、クランクをレンチで正逆転してみます。カムチェーンに大きなたるみがあることが解ります。

 

カムチェーンテンショナーは純正が付いていますが、長年の使用で内部のプランジャーが戻り易くなっています。新品交換をお勧めします。

 

チェンジペダルのガタも非常に大きくて困っているとのこと。点検します。

 

ペダルの軸は段付きになるほど摩耗しています。ペダル側の穴径もかなり広がっていました。

 

左が既存のペダルです。塗装されてきれいですが、穴の摩耗が多く、ロッドエンドもガタが大きいので右の中古良品とセットで交換します。

 

下が交換用の物、摩耗は少な目です。

 

ヒューズBOXも古いので交換します。

 

フロントのブレーキフルードもレベルが下がっています。

 

パッドの摩耗はさほど進んでいないようです。

 

ローターは指で触って段付きが解るほど摩耗しています。車検の際など、定期的にブレーキの点検整備は必要です。

 

ステムの部分、メインハーネスとカウルブラケットのエッジが当たっています。ショートや断線の危険があるので修正が必要です。