Z1100B2 U.S様 エンジン組み立て終了 ピスタルφ74+ヨシムラST-L1カム 1135cc

 

エンジン組み立ての続きで、ヘッドの組み立てから始めます。こちらのヘッドは別の車両用に仕立てたものでしたが、新品で組んだカムが初期のカム山摩耗トラブルを起こし、リフター摩耗→シムの飛び出し→シムがヘッドとカム山に挟まる→ヘッドに穴が開く、というトラブルがあり、それを修理したものです。

 

修理箇所は3番インテーク、リフターホールの手前。インナーシムだったのでその大きさに丸く突き破った感じで、きれいに破片が残っていたので金属パテで破片を貼付け復元しました。

 

裏から見るとこんな感じ。上からシルバーで塗装し目立たなくしました。

  

バルブは修理箇所のみ新品交換、あとはすり合わせして継続使用です。今回ステージ1カムになったのでアウターシム化しリフターは純正新品に、スプリングは純正中古品を使用しています。

 

使用するカムとスプロケはこちら。カムはヨシムラステージL1、現行の中空で軽量なZ系1カムです。バルタイ調整とZ用3本止めカムをJ系に流用するたのAPEのアジャスタブルカムスプロケも使います。

  

最近は海外製の比較的安価だったカムが高騰していく中、国産のヨシムラカムとの価格差が少なくなってきたので、最近はヨシムラカム一択といった状況です。品質や供給も安定していていいですね。さすがに老舗のブランドです。

 

ヘッドガスケットはPAMS製のメタルタイプを使用します。こちらも安定供給でビッグボアでも吹き抜けなどのトラブルはいままで経験していません。

 

ヘッドを組み付け、バルブクリアランスを調整します。

 

バルブタイミングを調整します。先ず初めに、1番ピストン上死点を正確に割り出します。やり方はダイヤルゲージをピストントップに当て、クランクを正回転方向で回しピストントップの前後約0.1ミリの位置を把握、その中央点を計算で出し上死点とし、全円分度器の0点を針に合わせて固定します。※ここでは同位相の4番で計測しています。

 

次にエキゾースト側のバルブタイミングの調整です。ダイヤルゲージの先をリフターに当て、カム山で一番押し込んだ位置を割り出します。ここでも最下位位置の前後0.1ミリぐらいを見つけ、計算でその中央値をロブセンターとします。次に、そのロブセンターにクランク角を合わせ、スプロケボルトを緩めて狙ったバルタイの角度までクランクを回してカムスプロケをスライド、ロブセンターと目標値が一致したところでスプロケボルトを固定します。

 

次にインテークカムのバルタイも同様に調整します。今回のバルタイはヨシムラの規定値であるインテーク105° エキゾースト107.5°としています。

 

J系エンジンはヘッドカバー内にもカムチェーンガイドがあり、カットモデルで見るとこのようにカム間が少し押された感じになります。これによりヘッドカバーの有る無しでインテークカムのバルタイは約0.5°変わります。なので厳密にバルタイをセットする場合はカットカバーを使用してもいいと思います。因みにステージ2程度までならバルタイセット時の誤差は目標値に対して±0.5°以内に合わせます。バルタイの誤差は概ね±1°くらいなら性能にほとんど影響しないと考えます。若いころのエンジン開発時、バルタイのセットは2~4°刻みで変化を見ることがありました。これと関係することで、点火時期の調整についてはもっとシビアで、エンジン開発時には1から2°刻みで調整していました。エンジンベンチでエンジンに向けたマイクで拾った音をヘッドホンから聞き、ノッキングの音を耳で聴き分けます。点火時期を進めていくと軽いノック(1秒間に1~2回ほど軽く聞こえるノッキングの音です。)が始まります。その位置から2°戻しがかなり攻めた仕様、4°戻しはストリートでの上級者向け、普段使いもするならさらにマージンを取って5°くらい遅らせておきますが、あまり遅くし過ぎると排気温度が高くなってエキゾーストバルブなどのダメージが増すので、使用用途によってセットします。何事もバランスが重要です。バイクの場合はエンジンがむき出しなので、実走行で十分ノッキングの音は聞き分けられます。レースの終盤、エンジンが過熱してくるとストレートで全開中に軽いノックが徐々に聞こえるようになったりします。その際スロットルを極わずか戻せばノックはおさまりますが、そのままノックを頻繁に出し続けるとピストンが溶けたりしてエンジンブローもあり得ます。そんな時は”エンジンを守る”か”今のポジションを守る”か、走りながら悩むものです。

 

ヘッドカバーを付けてエンジンは完成しました。

  

今後、車両への搭載、車両の仕立ては日程調整して進める予定です。

 

レストア前はこちら。外観はかなり汚れていましたが、表面のサビが少なかったので塗装面はきれいに仕上がりました。こんな感じで油っぽい汚れが多い場合は保存状態が比較的いいです。今回、内部も破損が無く消耗も少ないエンジンでラッキーでした。