Z1100B2 T.S様 フレーム分解点検

 

エンジンの塗装準備の続きから。カバー類のガスケットを剥がして清掃し、点検します。

 

ここにあるものは概ね良好です。ヘッドカバーは北米の二次空気導入装置付きから出っ張りのないヨーロッパ仕様に変更しています。

 

ミッションカバーはキズがあるので交換します。

 

過去にオイルシールを抜いた時に付いた痕でしょうか、ボルトのネジ痕が対面2ヵ所に付いていました。幸いこのカバーは新品がまだ手に入るので新品交換します。

 

続いてフレームは塗装するので車体をフレーム単体まで分解します。

 

左のミラーネジは、ほとんど舐めかけているので、レバーホルダーの方を新品交換します。これもまだ純正新品が買えます。

 

フレームに付いてい部品を点検しながらどんどん外します。

 

この車両はZ1100GPの1982年型、 Z1100-B2です。ノーマルでは左右セパレートハンドルですが、この車両はZ1000-R2の純正アッパーステムでバーハンドル化されています。メーターやイグニッションスイッチの取り付けは同じ、オフセットも同じ50ミリなのでアッパーステムはボルトオンです。インナーチューブのトップキャップは社外品ですね。ノーマルはセパレートなハンドルをトップキャップで止める構造で、インナーチューブはハンドルブラケットの厚さ分15ミリほど突き出して付くのがノーマルです。

 

B2フォークの特徴はこちら。インナーチューブが左右連結されています。これは左右のエア圧を繋いで同一にするイコライザーです。片側のエアバルブからエア加圧すると、左右のフォークに同圧でエアが入れられます。

 

社外のヘッドライトステーを外します。曲がっているので修正か交換ですね。

 

ハーネス、電装品と外します。

 

バッテリーはワンオフ製作されたブラケットに載っていました。

 

右前のステーが止められていないので3点止めになっています。本来B2はあるはずのエンジンマウントを左右橋渡しするステーが無いためでしょう。薄いアルミ板で作られているので補強するか作り直した方が良さそうです。

 

バッテリーブラケットを外します。これを取らないとリヤのインナーフェンダーは外せない構造でした。

 

スイングアームピボット周りはこんな感じ。キャッチタンクのホースがあるので、バッテリーは上方に移設されていたわけです。

 

電装品とハンドル周りが外れました。続いて足回りを外します。

 

リヤアクスルシャフトを抜こうとしたところ、レンチで回転はできるのですが抜けません。真鍮棒を介してハンマーで叩いてみますがびくともしません。先にスイングアームごとホイールを外すことにします。ちなみにスイングアームピボットにはガタがあり、スイングアーム全体が少々ガタつきます。

 

スイングアームピボットはこんな感じ。テーパーローラーベアリングのタイプです。このタイプは過去に沢山のトラブルを見てきました。これも問題を抱えていそうです。

 

ピボットシャフトを緩めると、フレームが開いて1ミリほど隙間ができました。この分フレームが変形させられていたということです。先ず幅が適正でありません。このスイングアームの場合、テーパーローラーベアリングを左右から押して適正なプリロードにしなければいけませんが、その際フレームを変形させて左右の距離を調整することになります。この時のピボットシャフトナットの締め付けトルクは、適正なプリロードにしたときのフレーム変形に対する反力で決まります。スイングアーム幅がフレーム内幅に近いと直ぐにプリロードが掛かりトルク不足になるため、ベアリングインナーレースの保持力不足して、チェーン張力でガタつきシャフトを摩耗させます。逆にスイングアーム幅が狭いとフレームを大きく変形させてプリロードを適正値まで上げることになり、フレームの反力が大きくなるので締め付けトルクも大きくできるという結果になります。ということで、テーパーローラーベアリングの適正プリロードとピボットシャフトの適正締め付けトルクが両立しないので、この構造のスイングアームは設計不良と考えます。

 

ホイールごとスイングアームが外れました。ピボットシャフトを抜く時も非常にきつかったです。

 

ピボットシャフトはこちら。ベアリングが当たる位置に削れた痕があります。スイングアームが前後に遊んでいたためです。

 

ベアリングはこんな感じ。

 

ホイールを水平にして作業性を確保、力の入る姿勢でアクスルシャフトを叩きますが、一向に動く気配がありません。あまり強く叩いてダイマグホイールを破損してもいけないので、大型のプレスで抜くなど、他の方法を考えることに。

 

気が付くと左のピボットべリングアウターレースが落ちていました。

 

手で脱着できるほど緩くなっています。ハウジングが広がっているのです。この症状がこのタイプのスイングアームに共通する不具合です。過去に5台ほど同様のトラブルでスイングアームを交換する事態に発展したことがあります。ここにクラックがある危ない例も複数ありました。修理するとしてピボットベアリングをニードルベアリング化する改造は、費用が掛かるので現実的ではありません。このスイングアームも交換することに。このタイプのスイングアーム、現在でも売られているので選択は慎重に。

 

動画で見るとこんな感じ。

 

フロント周りも分解します。

 

B2フォークの特徴、イコライザーが付く部分にはインナーチューブに穴が開いています。当然フォークを傾けるとここからオイルが漏れます。

 

保管は立てた状態で。触るだけでオイルが漏れるので、ガムテープで穴を塞いでおきます。かなりオイル漏れしたので、フォークオイルは交換してレベル調整も必須です。

 

外したフロントフェンダーはこちら。何か違和感があると思いますが、これはZ1000Jではなく他車流用です。

  

違いはいくつかあります。先ず、ステーのリベットが左右で6個。ステーの前後にネジ穴が左右で4個。

 

山の折り目の幅も違います。右がZ1000R純正。中央の幅が広く、型部分は狭いデザインです。おそらくZ750GPではないでしょうか。これもZ1000J系純正に戻したいところです。

コメントを残す