Z1000A2 M.T様 プラグネジの車載修正とキャブ・点火時期調整

 

プラグネジ修理のご依頼です。本来は電装系全交換をご希望で、長期に作業待ちいただいていましたが、今回それに先立って緊急の修理です。

 

1番リンダーのプラグですが、取り付ける時に斜めにねじ込んでしまったとのこと。少し後方に傾いていますね。

 

斜めになっているのを途中で気が付き、途中でやめてこの状態で自走で入庫されました。

 

プラグを外します。

 

ネジ山は口元1/3ほどが傷んでいるようです。

 

他のプラグのトルクをチェックします。2~4番は今のところ大丈夫。

 

クランクをレンチで回したいので、パルシングカバーを外します。ネジを全部緩めた状態がこちら。ネジ山のかかりが少ないですね。このボルト長さで右に転倒した場合、雌ネジが直ぐに飛んでカバーが外れ、内部のパルシングコイルまで破損して走行不能になる場合があります。ボルトのネジは十分にねじ込まれている方がいいでしょう。

 

点火系はウオタニSP2のバージョンまめしばです。ベースプレートは10°設定なので標準ですね。

  

プラグネジのヘリサート加工のためヘッドを外すことを想定していましたが、先ずは車載のままインマニからエアを吹き込む治具を取り付けます。

 

インテークバルブを少し開けた状態でエアを流すとこんな感じにプラグホールから吹き出します。この状態でタップを立てると、切粉はシリンダー内に入らず外に飛び出してきます。

 

ヘリサート用の2段タップでネジ切りします。先端ネジはプラグと同じネジサイズ、後半はヘリサート用のタップネジサイズになっています。これなら下穴を開けずに切込んで行けます。

 

角度を正規の状態にしてでねじ込みます。タップの隙間からエアと一緒に切粉が出てきます。

 

ネジの状態は思ったより良さそうなので、普通のプラグネジサイズのタップにしてみます。

 

修正後はこちら。見た感じ大方ネジ山は復元できたようです。

 

プラグを付けてトルクチェックしてみると、規定トルクがしっかりとかかります。とりあえずはしばらくこの状態で走れそうです。ヘリサート修理は次にエンジンを開ける機会にしてもいいでしょう。

 

キャブも少々チェックします。ポート内を覗くとMノズルが見えますね。このキャブはパイロット加工はありません。

 

ジェッティングを確認します。

 

スロージェットは55番です。

 

メインジェットを外すと、ニードルジェットのパイプごと外れてきました。これでは出先でメインジェットを交換する際に面倒になりますね。

  

ニードルジェットの方を少しきつめに締め付けます。これでメインジェットは普通に締めておけばメインジェットだけ外れるようになります。

 

他の気筒も直しておきます。

 

キャブを上下にしたときにニードルが遊ぶ音がしました。ニードルジェットを外すと通常はこのようにニードルが見えます。

 

1ヶ所はニードルが奥の方に入ってしまっています。クリップ抑えが開いているのでしょうか。

 

上の蓋を外して点検します。

 

2番のクリップ抑えのレバーが全開になっており、ニードルが遊んでいる状態になっていました。これでもセッティングが狂い、走行にかなり支障があったでしょう。ニードルを下げレバーを戻します。レバーのフリクションはあるので、自然に開くことはないでしょう。

 

他の気筒を確認すると、レバーのフリクションが無いところが2カ所ありました。開閉回数が増えるとフリクションが無くなり、走行中にレバーが開いてきてEリングの切り欠きとレバーの突起が一致するとニードルがレバーから外れることがあります。緩くなったらリベットをカシメ直すといいです。

 

スロットルバルブの同調を見ると、1番だけが狭いので調整します。

 

目視で4気筒の高さを揃えます。

 

先ほどのパルシングカバーボルトの件ですが、10ミリ長いボルトに変更します。

 

ボルトは底付きしない範囲で長い方がいいでしょう。

 

リヤブレーキのトルクロッドは、ロッドエンドに大きなガタがあり、酷くなると横に抜けてしまうので早めに交換するといいでしょう。

 

ジャッキアップ・ダウンをするとリヤ周りからガタを感じます。点検するとスイングアームピボットのガタが原因でした。

 

ホイールを持って水平方向に許すと、スイングアームが動きます。チェーンの張りがかわるので動画で確認できます。

 

左側のピボット付近を覗くと、赤茶色の粉が付着しています。これはベアリングがサビて摩耗粉が出ているのだと思われます。ピボットベアリングを交換した方がいいでしょう。

  

チェック走行に向かいます。先ずはガレージ周辺でチェック。スロットル低開度でバラつきましたが、エアスクリューを調整して改善しました。ノッキングもあったので、点火時期ダイヤルで1段遅角します。

 

その後、メインジェットと点火時期確認のため高速道へ向かいます。

 

ノッキングはまだ出るので、さらにダイヤルを1段変えて遅角させます。

 

画像で下のダイヤルが点火時期調整で、初めは1、それを2→3→4と遅角を増やしていってチェックします。因みにまめしばバージョンの場合、まめしばマップの標準が2、3は2.5°遅角となります。最終的に3でOK。ハイコンプピストン+ハイカム仕様のこのエンジンの場合、遅角方向で適合するのが一般的です。

 

八王子ICで折り返します。30℃超えの日中は暑くて大変ですが、日没くらいになるとだいぶ厚さも和らぎますね。

 

翌日納車の際、トルクロッドのロッドエンドは新品交換することに。

 

チェック走行で固く感じていたナイトロンリヤショックは、プリロードとダンパーを最弱にリセットします。こちらの方が良くストロークして1人乗りの場合に適しているでしょう。

 

ウインカーがたまに付きませんでしたが、社外品のスイッチBOXを開けて点検します。レバーの先端がスイッチの白い部品を乗り越えていました。

 

レバーの先端を少し下に曲げます。

  

これで正常になりました。来月予定されていたロングツーリングは安心して行けますね。

コメントを残す