Z1000R1 M.N様 クランクケースの破損

アウトプットシャフト交換のためエンジンを下ろします。

 

傷んでいるメインハーネスも交換するので外します。

 

バッテリーブラケットはバッテリー液でかなり腐食が進んでいます。

 

まだ純正新品が出るので、あるうちに迷わず交換しましょう。

 

エンジンを下ろします。そこで重大な損傷を発見。

 

クランクケースのエンジンマウント部分が欠損しています。

 

破断面に汚れが付いているのでかなり前に欠損したもよう。

これはJ系エンジンに比較的よくみられる症状です。

 

エンジンを下ろします。

 

エンジンマウントダンパーは、硬化してヘタってやせており、手でするすると取り出せます。

 

エンジンマウントダンパーを定期交換しないで乗っていると、エンジンが後方に引っ張られ、リジットマウントのリヤ側に力が集中し、ケースが割れるという流れです。

S1のようにフレーム補強しても完全には防げません。

適正なメンテナンスが必要です。

 

クラックもあるようなので、カラーチェックしてみます。

 

油分や汚れを洗浄し、赤い浸透液を塗布します。

 

10分ほど浸透させたら、表面だけ洗浄し、今度は透明な現像液を塗布します。

 

乾いてくると白くなり、クラックが赤い線で浮き出てきます。

 

クラックが見えてきました。

 

ちょうどこの部分でマウントボルトもくの字に曲がっていました。

 

拡大するとこんな感じです。

 

クラックは裏側まで深く達しています。

 

右側は大丈夫です。

 

これほどのダメージだとクランクケースの溶接修理はとても費用が掛かるので、

クランクケースは中古の良品と交換することになりました。

 

フレーム側を点検します。特にクラックなどは無さそうです。

 

J系は前側ダウンチューブにあるガセットによくクラックが入りますが、

この車両は左右とも無事のようです。

 

ステアリングダンパーのブラケットを外すと、フレームには大穴が開けられていました。

 

フロントフォークもオイル漏れしているのでオーバーホールします。

結果的には全バラすることになってしまいました。

 

カムホルダーの締め付けトルクを確認します。

ほぼ全数で規定トルクが掛かりません。ボルトも不自然に一部が交換されています。

 

バルブクリアランスを計測しておきます。

0.02ミリなどかなり狭いところも多数あり、これでは本来の性能は望めません。

 

カムホルダーを外すと、ヘッド側のネジヤマが取れてきました。

 

燃焼室は特に問題無さそうです。

 

10年ほど前に腰上だけオーバーホールされたとのこと。シリンダーも比較的きれいです。

 

ピストンは純正の0.5ミリオーバーサイズが入っていました。

こちらも比較的きれいな状態です。

 

ガバナーのロケートピンは、純正のスプリングピンでなく間に合わせの針金が入っていました。

 

エンジンのオイルパン側を分解します。

 

オイルパンを開けると、底にはスラッジの堆積が見られます。

 

比較的少ない方でしょう。

 

クランクケースを分離します。クランクはスムーズに回ります。

 

ミッションも比較的きれいです。ドグの異状摩耗も特に見当たりません。

 

クランクは少し位相ズレしていますが、J系エンジンとしては一般的なレベルです。

 

シフト周りの部品も外し、クランクケース取出し完了です。

将来は修理代をかけてでも使用する価値が出るかもしれませんね。

 

ヘッドも分解点検する予定です。

 

オーバーホール後1万キロ走行とのこと。ピストンリングの摩耗はかなり少なめです。

 

トップリングも中央のみの摩耗。セカンドリングは下側1/2くらいのみ摩耗しています。