Z1000J1 T.N様 エンジン分解

 下したエンジンを分解します。

 

ヘッドカバーを外します。

 

2番カムキャップのところはカバーの裏側にボルトの痕が付いています。これは過去にボルトが緩んでカムホルダーが浮いて当たった痕です。現状は修理されているようで、4本のボルトの内、1本がM8にサイズアップされています。

 

カムホルダーのトルクを確認します。半数位のボルトでトルク不足があり、ヘッド側の雌ネジの損傷が進んでいると思われます。全数、ヘリサート加工などの対策が必要でしょう。

 

1番プラグの雌ネジは、既にヘリサートで修理されています。

 

この状態でレンチでクランキングします。正逆転でバックラッシュが大きく、逆転時にカムチェーンテンショナーの大きな戻りが確認できます。

 

バルブクリアランスを確認します。最小は0.04ミリ、概ね.0.08から0.12の間にあります。

 

カムチェーンテンショナーを外します。プランジャーのスプリングに大きなスプリングワッシャーが入れられています。

 

このスプリングワッシャーは、スペーサーとしてバネ荷重を増やす目的と思われますが、プランジャーの逆止には効果は無く、テンションアップも不要なことです。テンショナー新品交換で改善できることです。

 

カムホルダーを外します。1本だけM8ボルトなのが解ります。

 

ノックピンのひとつは上下で外径が異なるスペシャルでした。既にヘリサートも入っているようです。

 

ヘッドを外します。

 

燃焼室は大きな損傷は無さそうです。ヘッドは少し面研されています。

 

ボアはノーマルのφ69.4ミリでした。

 

センターのOリングには液体ガスケットが多量に塗られています。

 

カムチェーンガイドの摩耗は少なめです。腰上は分解歴があるので、その時に交換されたようです。

 

スタッドのOリングがかなり硬化していることなどから、腰上分解後、10年以上は経っていると思われます。

 

シリンダー下面を見ます。

 

シリンダー下面には無数の傷があります。ガスケットを剥がす際に付けたと思われます。

 

ピストンを外します。

 

ピストンリングもベタ当たりしておらず摩耗は寿命の半ばほど。前回オーバーホール時にリングも交換され、その後もあまり走っていないようです。

 

ベースガスケットも社外品で、全面に液体ガスケットが塗られていました。

 

テンショナー側のガイドです。プランジャーによる凹みがかなり進行しています。

 

オイルブロックを外します。ここにも不要な液体ガスケットが塗られています。

 

リヤのエンジンマウント左側です。

 

エンジンマウントインシュレーターの劣化を放置するとエンジンが後方にズレ、ノーマルのカラーの形状によりこのように削れてきます。

 

この程度はまだまだ軽症の方です。エンジンマウントインシュレーターは定期交換が必要な部品です。

 

エンジンカバーを外します。ステーターコイルはきれいですね。

 

ジェネレーターローターを外します。

 

クランクのテーパーもきれいです。

 

右側のカバーも外します。

 

エンジンを反転します。

 オイルパンを外します。

  

オイル中のスラッジがかなり堆積しています。

 

オレンジのツブツブは、ジェネレーターローターのマグネットを固定している接着剤の破片で、多くはこのように剥がれ落ちます。

 

クランクケースを分離します。合わせ面の状態などから、新車から初めての分解のようです。

 

ミッションは大きな損傷は無さそうです。

 

クランクを点検します。ベアリングは全てスムーズでガタもありません。

 

振れは0.08ミリで規定値内です。

 

Jのクランクとしては点検棒がスムーズに通るので優秀です。

 

アッパーケースを更に点検します。

 

クランクのノックピン穴周りは、クラックなど無くいい状態です。

 

ミッションベアリングの受けは、フレッティングコロ―ジョンの痕もほとんど無く、こちらもいい状態です。

 

ケース合わせのこの部分もフレッティングコロ―ジョンが良くおきますが、このケースは比較的きれいな状態です。

フレッティングコロ―ジョンとは