デモ車Z1100B2 エンジン分解点検

  

続いて、チェック走行でガタを感じたフロント周りを分解点検します。

 

アッパーステムのボルトは手で緩む状態でした。これもガタの原因かもしれません。フォークを外しますが、B2のフォークは特徴があります。ロアステムの上側に左右フォークを連結するホースが付いている部品、「イコライザー」がありますが、インナーチューブにはその高さに穴が開いており、中のエアーこのイコライザーを通じて左右同じ内圧になる仕組みです。エアの入り口はイコライザーの片方に1個だけ付いています。

 

この穴があるとカスタムするにはいろいろとめんどうで、B2のフォークは敬遠される理由のひとつです。今回もこのフォークは交換します。役に立つのは1000Rと共通なアウターチューブくらいです。

 

フォークが合ズレました。

 

ステムのナットも手で緩みます。

 

内部のグリスを拭いていたら、上のアウターレースが取れてきました。少し緩いようです。これもガタの原因かもしれません。

 

フレーム内部は特に削れているわけではないようです。取り付けの際はロックタイトで接着した方がいいでしょう。

 

フォークとステムは手持ちのこちらに交換します。フォークはZ1000J1でステムはZ1000R1です。メーターは丸メーター化する予定。

 

エンジンは少し偏っているのがわかりますか?車体左側、向かって右側にズレています。

 

その原因はこちら。本来インシュレーターとフレームの間に4ミリほどのU型ワッシャーが入るのですがありません。その分こちらに4ミリズレているということです。

 

Uワッシャーはどこかというと、反対側に付いています。

 

続いてエンジンを下ろします。一人で十分作業できますが、私の場合はガレージジャッキとこの黄色いプラ箱が必須です。

 

フレームを養生し、エンジン下側をすくい上げるように車体右側に引き出します。この時ドレンボルトがフレームの外に出ているのがポイント。

 

そうするとヘッドカバーはわずかな隙間でフレームをクリアするので、アンダーフレームを軸にエンジンをゴロンと倒せば出てきます。

 

移動用にエンジン台車を用意します。作りはこの程度で十分です。左右の間隔はオイルパンのフィンが全部入る程度がいいです。

 

裏にはキャスターを取り付けます。

 

黄色い箱はやや高さがあるので、ジャッキを使ってエンジンを下ろします。

 

箱の上面と同じ高さにしたジャッキに、前倒しでエンジンを載せます。これを片手で支えながらジャッキを下げます。

 

ジャッキを下げたら台車にゴロンと載せればエンジン下ろし完了です。

 

因みにJ系エンジンの重さは90キロ程あります。

 

エンジンマウントボルトです。エンジンのマウント方法も問題があり、インシュレーターもヘタっていたので、エンジンはかなりねじられた状態でマウントされていました。

 

リヤのボルトはこれだけ大きく曲がっています。これはよくあることです。

 

こうなるとクランクケース側も斜めに編摩耗します。

 

フロント側のボルトもこれだけ曲がっています。フロントがこれだけ曲がるのはかなり稀な状態です。

 

続いてエンジンを分解点検します。先ずはヘッドカバーを外し、カム周りを点検。カムはノーマルです。カムチェーンの背中側が鏡面になるほど摩耗しているので、カムチェーンはかなり長距離を無交換で走っているもよう。

 

バルブタイミングは問題無し。

 

バルブクリアランスは全て限度値最小レベル。

 

カムホルダーネジのトルクは全て大丈夫です。

 

ジェネレーターローターを外します。

 

カムを外します。

ヘッドを外します。腰上オーバーホール歴有りとのことでヘッドガスケットはPAMSのメタル製に変わっています。

 

燃焼室も特に問題無さそうです。

 

ボアは純正のφ72.5ミリです。

 

シリンダーを外します。ピストンもノーマルです。

 

シリンダーはスカッフがやや多めです。

 

ピストンはそれほどキズが無い感じです。

 

前回リングだけ交換したそうで、まだ摩耗は極わずかです。

 

ピストンを外してエンジンを反転します。

 

オイルパンを外します。堆積した異物の大半は、ジェネレーターローターの接着剤の破片で、それ以外は特に問題無さそうです。

 

クランクケースを分離します。

 

クランクを取り出して点検します。点検棒は通りません。ズレは大きめです。

 

振れを計測します。0.04ミリでこちらはグッドです。

 

クランクケースを点検します。

 

右から2番目のノックピン穴は要注意箇所です。

 

このケースも残念ながら大きなクラックが入っていました。その方向から右側に激しい転倒歴があることが推測されます。

 

カラーチェックで詳細に点検します。

 

カラーチェック後、更にクラックが浮かび上がってきました。

 

横のかなり下の方まで割れています。もう少しで大きな破片が脱落するところでした。このケースは使用を中止します。

 

ストックの中から同じ型式のケースを選び出しました。こちらに交換することに。

 

あとはヘッドとミッションを詳細にチェックします。

  

とりあえずストリップになりました。フレームはシートレール修正有りのリペイントですが、チェック走行で直進安定は抜群だったので、曲がりなどの問題はないでしょう。

 

他に取り付けるパーツを手持ちのなかから吟味します。

 

キャリパーはS1タイプがいいですね。

 

アンダーステムもやはりS1ですね。