Z1000R2フレームの修理

  

Z1000R2の、フレーム単体修理のご依頼です。

 

中古車両で入手後、レストアの為フレームまで分解したので、いくつか修正したい箇所があるとのこと。

 

先ずは、フロントスプロケ脱落・噛み込みによるフレームの凹みがあります。このせいでスイングアームピボットのフレーム内幅も少し縮まっています。

 

サイドスタンドブラケットは、かなり広範囲に溶接補修されています。フレームパイプも潰れて変形しているので、ブラケットが外れてねじられたのだと思います。

 

後ろから見るとこんな感じ。

 

アンダーフレームの右側ブラケットも変形しています。

 

ハンドルストッパーも溶接による補修痕があり、左右非対称になっています。

 

リヤのエンジンマウントブラケットはにも溶接による補修の痕があります。おそらくクラックを修理したのでしょう。

 

前側ガセットも含め、1000Jでよくクラックの入る場所をカラーチェックしてみます。

 

洗浄して浸透液を塗布します。

 

浸透させている間にフレームの修理を進めます。先ずは潰れているブリッジパイプを切り取ります。

 断面はこんな感じです。

 

サイドスタンドブラケットも削除します。裏側にも溶接補修の痕がありますね。

 

切断面を研磨します。

 

サイドスタンドブラケットの場所はパイプ内側のサビも酷く、肉厚も薄くなり穴が開いてしまいました。フレーム内部にはサビがかなり堆積しています。

 

ここからは修正作業です。右下のブラケットは曲げ直して修正できました。

  

フレーム内の異物を除去します。

 

先ほどの浸透液を拭き取り、続いて現像液を塗布します。

 

現像液が乾き、クラックが明らかになりました。

 

前側ガセットは左側に1センチほどのクラックがあります。

 

これは1000J系のフレームの半数くらいによくあります。

 

リヤのエンジンマウントブラケットも、補修していない部分にクラックがあります。

 

こちらも1センチほどクラックがあります。これもたまに見られる症状です。

 

ブリッジパイプは新しく切り出したパイプを擦り合わせして溶接します。ピボットには純正の幅にした治具をはめて溶接します。

 

センタースタンドは使わないので、シンプルなストレートパイプになりました。

 

サイドスタンドブラケット部分は、フレームを切り取って新しいパイプで作り直します。先ずは、パイプ内部に砂を詰めます。

 

ベンダーで曲げます。

 

近距離で互い違いには曲げられないので、曲げを2ヵ所作って繋ぎ合わせることに。

 

2ヶ所のアール部分を切り出しますが、使うのはこれだけです。

 

フレーム形状に合わせて90°ひねった形でパイプを溶接します。

 

フレーム側は、差し替える部分を切り取ります。

 

ダミーエンジンを載せて治具とします。

 

擦り合わせして新しいパイプを溶接します。

 

半分ぐらい仮付けします。

 

ダミーエンジンを下ろして全周溶接します。

 

サイドスタンドブラケットは、お持ち込みのこちらを使用します。

 

ブラケットの角度を他の車両から割り出します。

 

同じ角度になるよう、ブラケットを溶接します。

 

裏側も同様に溶接します。

 

 

側面も純正と同じように溶接します。

 

続いてハンドルストッパーです。切り落とした後、純正形状のプレートを用意します。

 

ベアリングが入るところなので、溶接で歪まないよう少しづつ溶接します。

 

クラック箇所も溶接します。以前の補修個所も肉盛りしておきます。

 

元の補修痕も含め、研磨してノーマル風に仕上げます。

 

パイプの曲げ部分は、ベンダーの関係で少し波打っていますがご了承ください。

 

裏側はスムーズです。

 

これでフレームの修理は完了です。車両組み立て後、サイドスタンドは車高に合わせて角度と長さを修正するといいでしょう。

 

サイドスタンドは、素材としてこちらのFX1純正品も使えます。