Z1000R2 K.S様 分解点検

  

現状販売で入手された車両をお持ち込みになられたので点検整備します。

エンジンも始動して一見、整った車両に見えます。

 

エンジンは腰上分解整備を想定、車体はメインハーネス交換など電装系の更新は計画済みです。

 

外装を外します。フレームはリペイントされていないようです。部品の欠品なども少な目で、オリジナルの部分が多く残っているようです。

 

コイルはノーマルですが、激しく補修されているので要交換です。コードも抜けてしまいました。

 

メインハーネスとハンドルスイッチの接続コネクターです。変形しているので、端子の腐食による接触抵抗で発熱し、溶けたものと思われます。外せないのでハーネスを切断します。

 

バッテリー横の端子類は、内部の端子が激しく腐食しています。

 

交換するのでメインハーネスを外します。

 

北米仕様なのでヘッドカバーには2次空気導入装置の出っ張りがあります。煩わしいのでヘッドカバーはヨーロッパ仕様に変更します。

 

マフラーを外します。だいぶ底打ちしていますね。

 

パイプ2本は1/3くらい潰れているので、マフラーは交換をお勧めします。

 

エンジンオイルを抜きます。

 

フィルターカバーには大量のスラッジが堆積しています。ここまで酷いとオイルパンを外して点検した方がいいでしょう。

 

バルブクリアランスを点検します。かなり狭いので要修正。

 

カムホルダーネジのトルクを確認します。半分は増し締めできて、1本はトルクが掛かりません。全部ヘリサート加工した方がいいでしょう。

 

シリンダーのM6ボルトもトルクを点検します。1本はトルクが掛からないので修理が必要です。

 

ヘッドを外します。ピストンはノーマルのΦ69.4ミリでした。ヘッドガスケットはノーマルではないので、エンジン分解歴があるようです。

 

ヘッドの燃焼室をみてみると、3番のバルブ周りに不審な窪みが多数あります。

 

エキゾーストのシートリング外周に沿って並んでいますね。

 

カーボンを落として詳しく見てみます。

 

シリンダーを外します。大きなスカッフは無いようです。リングはかなり摩耗しています。

 

ピストンを外します。予定の作業はここまででした。

 

エンジンマウントの前上側です。ここに入っているはずのU字型スペーサーがありません。その分エンジンが右側に寄って付いていることになります。フレームやクランクケースに無理な力もかかります。

 

エンジンマウントインシュレーター交換や、オイルパン外しも加わったので、エンジンは下ろすことにしました。マウントボルトはかなり錆びて固着していました。

 

エンジンを下ろします。

 

オイルパンを外します。やはり大量のスラッジが溜まっていました。

 

エンジンマウントインシュレーターは、ゴムが硬化して緩くなっていました。

 

上下反転したエンジン腰下です。左下のリヤ側エンジンマウントをみると、端面がかなり摩耗して変形しています。

 

エンジンマウントインシュレーターのメンテナンスを怠り、U字のスペーサーを紛失させたまま組んで走行したりの結果、ここに負担が集中し、マウントカラーの端面が皿型なのも相まって、ケース側がこのように削れます。ケースも交換してもいい状態です。

 

燃焼室のカーボンが剥がれました。詳しく見てみます。

 

小穴の周囲は潰れて広がっているので、緩んだシートリングを固定するためカシメたのでしょうか?このままこのヘッドを使うのはリスクがありますね。交換する方向で検討します。

 

肝心のフレームのウイークポイントは特に問題無いようです。フレームさえしっかりしていれば、なんとかなるものです。