オークションでタイムリーに見つかったクランクケースが届きました。
シリアル番号から説明の通りZX1100-A2 GPZ1100のケースと解ります。型式はZ1100GPと同じKZT10BEなので、車検もこのまま通ります。
今回ケースを交換する理由となった不具合は、クランクメインジャーナルのノックピン穴周りのクラックでした。こちらのケースはその部分の詳細が不明だったので早速確認します。
結果は無傷で全く問題無し。せっかく手を入れるなら、ここは少しでもクラックの無いケースがいいですね。
その他にも一般的にケースの要チェックポイントをいくつかご紹介します。先ずはリヤのエンジンマウント部左側の面の状態です。ここは前期のモデルはラッパ状のカラーなので火山の噴火口のように外周に向かって摩耗している物が多くあります。
このケースは摩耗が少なくほぼフラットなので合格です。
続いてシフトシャフトが入るボス、ここもクラックがよくあるので要注意。通常の走行でクラックが入るわけではなく、下ろしたエンジンを持ち上げる時に、シフトシャフトをつかんで持ち上げると割れるようです。割れていたら雑にエンジン脱着された証です。
続いてスターターギヤのリダクションギヤのボスもクラックがあることが稀にあります。ここは転倒で派手にジェネレーターカバーを割った時に力が掛かって割れるようです。左に転倒歴があったら要注意。
無事にいいケースが見つかったので一安心。
続いてヘッドの話。ストック4基の内一番いいと思われるこのヘッドを更に点検します。燃焼室やポートのカーボンを落として隠れた不具合が無いか確かめます。
1時間ほどかけて大方のカーボンが取れました。
新たな不具合を発見。3番エキゾーストのバルブガイドに問題があります。
燃焼室側が僅かに楕円に広がり、3方にクラックがあります。ステムとのクリアランスは正常値だったのですが、おそらくオーバーレブでバルプがピストンとクラッシュして曲がり、その力でガイドが押し広げられたものと思われます。他は問題ありませんでしたが、エキゾースト側のガイド4本は交換しようと思います。
デッキ面の深いキズはこちらにもあります。
これは整備中ヘッド単体の時に何か落とした痕でしょうか。これは溶接で埋めておきます。
バルブシートカットができる余地があるかを確認します。純正新品のバルブを用意します。
バルブをセットします。
バルブが閉じた状態で、上側に突き出したステムの高さを測ります。これが38.5ミリ程度以下の場合はほとんどシートカットされていないヘッドです。このヘッドもその範囲。これならシートカットする余地が十分あるのでOKです。
カムホルダーボルトも数本がノーマルでないので要チェック。
7本が直径6.3ミリのインチサイズのボルトになっていました。これならヘリサートで修正する余地があるはずなので大丈夫でしょう。
カムホルダーにも欠けがありました。カムのスラスト受けの角が欠けています。これは組む時にカムが乗り上げた状態で無理やりボルトを締めるとこうなります。まあ、このくらいの欠けは特に問題無いでしょう。ということで、このヘッドがドナーの最有力候補です。