ワークスタイプのオイルクーラー取り付けのご依頼です。
いよいよ、ワークス車ルックの仕上げのアイテムです。
取り付けには、ガセットのカットを伴います。
オイルクーラー取り付けの前に、エンジンからのオイル漏れを修理します。
この車両は入手前にエンジンオーバーホール済みですが詳細は不明とのこと。
オイル漏れの箇所は、ヘッドガスケットの両サイド。
1日の走行でズボンが汚れる程度漏れるそうです。現在は拭き取ってあるそうです。
シリンダーベースガスケットのところからも漏れているそうです。
タンクを外す際、右のコックはOFFにしてもガソリンが止まりません。
タンクは、単体でお預かり、Wコック化して送り返したものです。
分解して点検します。
塗装が弱いのか、液体ガスケットを塗ってあるせいか、塗装もかなりはがれてきます。
コックをOFF位置で分解すると、中のコマが180°逆に付いていました。
正しく組めば問題無いでしょう。
サビが溜まっていたのでエアブローしてから組み立てます。
コックのベースは、製作時に面研しているので平面です。
はがれかけた塗装は全て剥がし、シールはOリングだけで大丈夫です。
反対側も念のため分解点検します。こちらも塗装が剥がれました。
塗装を剥がします。
こちらも分解点検し、液体ガスケットを剥がしてOリングは新品交換します。
コックを取り付けてガソリンを入れます。もう漏れないのでこれで大丈夫です。
本題の腰上分解です。マフラーを外します。
バルブタイミングを確認します。
1番上死点を出し、エキゾーストカムの矢印がヘッド上面に合っていることを確認します。
そのままインテークカムのタイミングを確認すると、1コマほどズレています。
続いて、バルブクリアランスを計測します。半数ほどは狭いので要調整です。
カムホルダーのトルクをチェックします。
エキゾースト側の4ヶ所はトルクが掛かりません。
トップアイドラーを外し、カムチェーンのコマ数を確認します。やはり、インテークが1コマ進んで組まれています。クランク角で22.5°進んでいることになるので、本来の性能は出ていなかったでしょう。
カムを外します。カムメタルは綺麗です。
ヘッドを外します。ガスケットの張り付きは極わずか。
ヘッド側も特に問題無し。
センターのOリングも切れてはいない模様。
カムチェーンアイドラーは、既に内輪が剥離しています。
テンショナー側も外します。
こちらも剥離しています。
シリンダーを外します。
こちらもガスケットの張り付きは極わずかでした。
ピストンの全様が見えてきました。
かなりトップが盛り上がったハイコンプピストンですね。
ピストンリングの摩耗はまだ少なめです。2ndリングなどは1/3も摩耗していません。
ボアを測ると約φ70.5ミリです。0.5ミリオーバーサイズです。
シリンダーも状態も良好です。
使われていたセンターOリングは、まだしなやかでした。
スタッドの根元に堆積した砂や泥は、掃除機で吸い取り除去します。
ベースガスケットも密着が弱く、手でこれだけ剥がれました。
残りはスクレッパーで剥がします。デッキ面は過去のキズがやや多めです。
ゴミも若干落ちたでしょうから、エンジンオイルも抜きます。
フィルターも新品交換します。
ドレンの締め付けは規定トルクで。
フィルターカバーも同様に。6角穴は舐めやすいので、締め過ぎには要注意。
ピストンのカーボンを落として点検します。
てっぺんには「1.00」の文字があります。通常は1ミリオーバーサイズの意味ですが、実際はφ70.5ミリで0.5ミリオーバーサイズです。
裏側から解る通り、鋳造のピストンです。
見慣れないピストンですが、メーカー名がよくわかりません。
こちらには丸Dのマークがあります。
カムホルダーのトルク抜けの箇所を点検します。
ネジ穴は16ヵ所全てにヘリサートが入っていましたが、場所によっては深いところもあるの、2回目の修理もされているようです。
トルク抜けした個所のヘリサートは、極短いものでした。