Z1000LTD K.H様 エンジン不調点検

エンジンに気になる振動があるとのとこで点検します。

 

先ずは現状把握のためチェック走行しますが、特に異常な振動は感じられません。

再度オーナーさんに発生状況を確認すると、極低回転からのスロットル急開時に少し振動するそうで、それはZ系エンジンとCRなどの強制開閉キャブの組み合わせではでは実力ですということで異常ではないことがわかりました。

 

メインジェット以外はキャブセッティングも上々です。

エアスクリューだけ少し調整してチェック走行は終了します。

 

ガレージに戻り、残りのメニューを進めます。

 

左ハンドルスイッチのどこかが接触悪いとのこと。W650純正品に交換することに。

 

W650のは、位置決めの突起があるので削除します。

 

メインハーネスとの接続はバラ線なので、ハンドルスイッチ側に合わせて9ピンカプラーに改造します。

 

左ハンドルスイッチ、取り付け終了です。ウインカーはプッシュキャンセルになります。

 

エンジン上の配線もまとめて、風通しを良くしておきます。

 

スロットルケーブルのアジャスターが緩んでおり、スロットルの遊びは10ミリほどあります。

 

スロットルホルダー側は完全に脱落しています。

 

調整のついでに、ケーブルにはエンジンオイルを給油しておきます。

 

スロットルケーブルの調整終了。遊びは最小にして、スロットル操作のタイムラグを無くします。

 

続いて、高すぎるチェンジペダルを修正します。良く見るとロックナットが緩んでいます。

 

エンジン側のリンクを差し替え1コマずらし、なるべく直角にします。ペダル側は構造上変更できません。

 

続いて、ブレーキペダルの踏み代が大きいとのこと。

 

先ずはエア抜きしてみます。

 

オフ車のマスターが流用されていますが、リザーバー容量が少ないのでエア抜き作業は大変です。3回流すごとにフルードを補充しないといけません。

 

エアが少し出てきたので、踏み代はだいぶ減りました。

ペダルの高さも調整しますが、プッシュロッドのロックナットも緩んでいました。

 

ペダルをやや上げました。

 

踏み込んでこの高さです。これなら足首にも無理が掛かりません。

 

エンジンオイルも下限値なので補充します。

オーバーホールしたばかりだそうですが、チェック走行では常時白煙が出ていました。オイル消費が多いようです。

 

チェック走行で高負荷時にノッキングが酷かったので、点火時期を確認します。

 

パルシングカバーのボルトは、片方が短過ぎです。これでは出先で転倒したばあい、簡単にカバーが吹き飛んで内部を破損し走行不能になり易いです。

 

点火時期は標準より5°進めた15°でした。オーナーさんに理由を確認すると間違いのようでした。激しいノッキングはこれが原因でしょう。

 

正しくは10°に合わせます。これでフル進角でノーマルと同じ40°になり、通常はこのセッティングで大丈夫です。

 

カバーのボルトは正規の長さの物に変更します。

 

再びチェック走行に向かいます。

 

高速道も空いてきたので、高回転までの確認に行きます。

 

石川PAまで来ました。エンジンは極めて快調になりました。後輪100PSと言ったところ。

 

ところが他に問題が。

 

マフラーにかなりオイルが飛散しています。

 

オイルの出所はRHエンジンカバーとクランクケースの間からのようです。

 

ガレージに戻って点検します。

 

靴はオイルまみれです。

 

エンジンオーバーホールしたはずですが、何が原因でしょうか。

 

パルシングコイルを外します。

 

オイルシールには1周ぐるっとキズが付いています。

 

キズの原因はウオタニのタイミングローター裏側の突起です。

Z系にウオタニSP2を組み込む場合は、このオイルシールを奥にするのが鉄則なのですが。

 

RHエンジンカバーを外します。締め付けが少し緩い程度で、取り付け面やガスケットに特に異常は見られません。

 

オイルシールは交換します。

 

シールの高さは面一以下にしておきます。

 

裏側はわずかに出っ張るくらいです。

 

エンジンカバーを取り付けます。

 

ローターを嵌めて隙間があることを確認します。

 

ここでまた問題発覚です。ローターは位置決めピンで固定されるはずが、回転方向にかなりガタがあります。その動画がこちら。これでは点火時期の再現性がありません。

 

原因はノックピンのツブレでした。点火プラグを付けたままレンチで勢い良くクランキングするとこうなることもあるので要注意。

 

新しい純正のスプリングピンに交換します。

 

これならローターの遊びはほぼゼロです。

 

ピックアップコイルのベースプレートボルトのワッシャーは薄くて変形していたので左側の厚い物に交換します。本来のウオタニ同梱品も厚いワッシャーです。

 

取付ネジをしめると、ネジ山が上がってしまいました。

 

ドリルで下穴を深くします。

 

ネジを深くまで切り足します。

 

もう1ヶ所も同様に。

 

2ヶ所長いボルトに交換して取り付けます。

 

イニシャルの点火時期は10°に。

 

漏れたオイルをきれいに脱脂します。

 

これで今回のメニューは完成です。